ワーホリ/オーストラリア

オーストラリアの広い海で遭難。「死ぬ」と本気で思ったあの日の話。

こんにちは!

夫婦で旅をしているタビワライフの涼(@tabiwalife)です。

 

このブログを書いているということは、生きて帰ってこれたってこと。

 

今回の出来事は、決してネタにはできないくらい命の危険を感じました。

 

死を感じて青ざめた時、「こんな感情が出るんやぁ」と今なら冷静に思えるけど、

その時は自分にはどうすることもできなくて、ただただじっと何かに祈ることしかできなかった。

 

もうあんな経験は二度としたくない。




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海外で初めての釣りへ

わたしたちが働いているファームのボスのディーンは釣りが好きでよく釣りに行っている。

 

DSC_3887一眼レフ)釣った魚をさばくディーンと仲間達。

 

わたしたちはディーンのファームで働くようになってもう4ヶ月。

 

ディーンとの信頼関係もちょっとずつ築けてきて、ディーンがわたしたちを釣りに誘ってくれた。

 

釣りはあまりやったことないけど、やりたいとは思っていたので行きたい!とすぐに思った。

 

何よりディーンがわたしたちを誘ってくれたことが嬉しかったしすごくワクワクした。

 

ディーンにはいつもよくしてもらってるから何かしたいなと思い、

釣り当日のお弁当に手巻き寿司を作り、ビール好きのディーンに日本産サッポロビールを買って行った。

 

酔いやすいわたしたちは、ボートで酔わないように酔い止めの薬を飲み準備万端の状態でいった。

 

なんだか悪い流れを感じた

当日、前日の楽しみとは裏腹に始まりから悪い流れを感じた。

 

ボートは、車で牽引して海まで持っていったが船と車を離すための用具を忘れてしまったディーン。

いろんな代用品で試すもののどう頑張っても無理。

 

DSC_4015一眼レフ)こんな感じでボートを海へ下ろす。

 

結局、用具は近くの釣り屋さんで新しく購入し船と車を無事離すことができた。

 

さぁ海へ!しかし…あれ、水?

 

いざ海へ!と一番にボートに飛び乗ったわたし。

 

あれ?と目を疑うような光景が…

 

船の中に水が…

 

それを見て急いで車を取りに行ったディーン。

そして急いで牽引させボートを海から引きづり出す。

 

何が起こったのか全然わからないわたしたち

ただディーンの焦りをみて危ないところだったことはわかった。

 

ディーンは、ボートの底につけなければいけないキャップをし忘れてて海の水が侵入していたのだった。

 

陸にあげたボートからは勢いよく出てくるわ出てくるわ水が。

何十リットルってくらいの水が出てきた。

 

DSC_4023一眼レフ)こんな勢いで10分くらいで続けた。

 

「ラッキー!もうちょっとで沈むところだった」と笑うディーンに

 

この時はわたしたちもディーンらしいなと笑っていた。

 

DSC_4025一眼レフ)能天気なディーン。私たちは正直ビビっている。

 

準備は完璧?な状態でわたしたちは海に繰り出した。

 

海の上でボートに乗りながらゆっくりと釣りをするのを想像していたわたしたち。

 

海に繰り出した瞬間、想像を全く覆すような現実がわたしたちを待っていた。

 

やっと海へ!こんなに揺れる?!

え!めっちゃ揺れるやん!!

ボートを走らせた瞬間に思った。

 

DSC_4061

 

こんなに揺れる?

 

船は全長6m。運転席合わせて椅子は2つ。3人で釣りをするには十分なスペースはある。

そんなボートを時速100キロくらいのスピードで走らせるディーン。

 

波を越えるたびに、船はちょっと浮いて水面に着地する

 

着地するたびに、ドーンッ!とすごい振動が全身に響く。

 

広い海を見て楽しむどころか、シートベルトのない絶叫マシーンに乗っているかのようで

立ってるなんてもちろん不可能だし、座っていてもちょっと油断すればどこかに頭をぶつけそうなくらいだった。

 

必死にしがみつきながら広い広い海を突き進んでいった。

 

やっと船を止めてゆっくり釣りができる…と思いきや、

GOPR1583-0002GoPro)テキパキと準備をするディーン。私は竿もってるだけ。笑 そして髪ボサボサすぎる…

 

ディーンは言った。

「漁船の近くで釣りをする」

 

いまいち意味がわからなかったが、釣り初心者のわたしたちはこの揺れが普通なのか異常なのかわからなかったから、

早く落ち着いた場所にいって釣りがしたいと思っていた。

 

船を走らせること40分ほど。

遠くの方に大きな漁船が見えてきた。

 

やっとこの絶叫マシーンを止めることができる!

 

とちょっと安心した瞬間でもあった。

 

漁船まで数メートルというところまで接近してボートは止まった。

 

 

ここでもまた、わたしたちの想像を覆す出来事が待っていた。

 

船を止めた瞬間、買ってきた餌の魚をボートの周りに撒くディーン。

そして、釣竿に餌をセットし夫に手渡した。

 

“ゆっくりのんびり釣りをする”

これがわたしたちの想像していた釣りだった。

 

が、しかし

釣竿を持つ夫は、どこかにつかまらないと立っていられないほどボートは大揺れだった。

 

船を走らせてた時の絶叫マシーンのような感覚とは違い、

船が波で横転するんじゃないかというまじの恐怖だった。

 

波がやってくるたびに横転するんじゃないかという恐怖で釣りを楽しむどころではない。

 

この時私は正直もう帰りたいと思った。
(後から聞いた話、夫も思っていたらしい笑)

 

DSC_4031一眼レフ)そんなに波は高く見えないけど大揺れ!写真撮るの必死

 

漁船の近くは魚が多くいるというディーンの予想できた場所だったけど、

残念ながら魚はヒットせずすぐに場所を変えることとなった。(もうあの場所には二度と行きたくない)

 

場所を変えてやってきたのはとっても落ち着いた浅瀬の場所。

 

ここではゆっくりのんびり釣りを楽しむことができた。

 

DSC_4032一眼レフ)海の水がめっちゃキレイでテンションが上がった。そしてここではなんと!イルカが見れた!

 

でも、ここまできてわかったことはディーンは釣りの上級者であるということ。

 

そして、ディーンがかなりのせっかちであるということ。

 

ディーンは
わたしたちに魚を釣って喜ばせたいという思いがあったと思う。

 

だから、15分ほど待ってみて釣れない場所はすぐに移動する

それがディーンのスタイルであった。

 

GOPR1583-0001
GoPro)浅瀬で釣りを楽しんでる時。魚眼やから太って見えるけどこんな太くない。笑

 

こののんびりとした釣りの時間は一瞬にして終わった。

 

初めて釣れた喜び

次にやってきた場所は、島の近くの水深16メートルほどの場所。

強い揺れに踏ん張りつづけだいぶ疲れてきていたわたしたち。

 

DSC_4037

 

今日は釣れないなと諦めかけていた時だった。

 

ディーンの釣竿がしなっている!魚がかかった!

 

その後、わたしの釣竿にも夫の釣竿にも魚がかかり次々に魚が釣れていった。

 

GOPR1591-0002GoPro)大地くんが釣った魚はmackleという魚。これは食べてもおいしくないようで愛犬の餌に…笑

 

中でも、わたしの釣った魚は一人じゃ持ち上げられないほどの大物でそれはそれは嬉しかった。
(興奮して肝心の魚の写真を撮り忘れた…)

 

 

そろそろ日も沈んでくるから帰ろう

いつの間にか時間は15時になっていた。

 

夕方になると波も高くなってくる。

なにより暗くなる前に町に帰らないと危険。

 

ってことで海外で初めての釣りはここまで。

あれだけ恐怖を味わったせいか、帰れることにちょっと安心を感じていた。

 

町に向けて船が走り出した。

ここから町まではおそらくボートで1時間ちょっと。

 

きた時と同じように揺れや振動はすごかったけど、「帰り道」というだけで来た時よりも恐怖心は少なかった。

 

ところが、、、まさかの事態が私たちを待っていた

走り出して10分くらいたった時だった

 

高い波の上を走った瞬間、ボートが思いっきり浮いた。

 

そして、勢いよく水面に着地した。

 

ドーーンッ!

 

ギャー!と声が出てしまうほどの振動だった。

 

その瞬間、、、

 

船が止まった。

 

さっきの着地の衝撃で、エンジンがやられてしまった。

 

え。まじで?

 

エンジンが故障!?

ヒューン…

 

エンジンが止まった。

 

時速100キロで走っていたボートは一瞬で停止した。

 

え?大丈夫やんな?

 

と自分に言い聞かすようにディーンがまたエンジンをかけるのを待つ。

 

まじで?

 

ディーンが船の鍵を回してもエンジンはうんともすんとも言わない。

 

まだこの時は、この後さらなる恐怖が待っていることはわからなかった。

 

エンジン直るよね…?

この故障は、さっきの着地の時の衝撃が原因だっただけですぐに復活する。

 

そう思っていた。

 

でもそんな甘くはなかった。

 

ディーンはバッテリーを点検し始めた。

何をどういじっているのかはわからなかったけど、

コード類を触ってはエンジンをかけてみる

これを繰り返した。

 

この頃からわたしたちは本気で焦り始めた。

 

なぜなら、ディーンがこんなに焦る姿を今まで見たことがなかったから。

 

DSC_4059一眼レフ)まさかの事態に焦りを隠しきれないディーン。

 

ディーンの話す英語を100%聞き取ることができないわたしたちだったけど、

ディーンが、Fuck!と何十回も言っていたのはわかった。

 

何度バッテリーのコードを触ってもエンジンはかからなかった。

 

エンジンが止まってから15分くらいが過ぎた時に気づいた。

 

船が流されている。

 

慌ててイカリを下ろすディーン。

これで船が流されることはなくなったがもう一つ大きな問題が残っている。

 

明らかに波が高くなっている。

 

この日は風がやや強めで日中から穏やかな海ではなかった。

 

この時の時刻はもう夕方16時頃。

日中の波よりも少しずつ少しずつ高くなってきているのがわかった。

 

レスキュー隊を要請するしかない!?ところが…

DSC_4046一眼レフ)少し遠くの方は波がすごく高い。もしこの場所の波も高くなったら…

 

ディーンがバッテリーを修理する姿をじっと見つめることしかできないわたしたち

 

これはもう直らないと思ったのかディーンは次の行動に出た。

 

それは

レスキュー隊要請。

 

 

このままでは日が暮れてしまう。

そして船がいつ横転し、転覆するかわからない。

 

レスキュー隊要請なんて相当なことがないとしないと思う。

 

でもこれはもうどうしようもできない。

 

ディーンは無線機を使ってレスキュー隊を要請した。

 

「 … 。」

 

無線機から応答がない。

 

電波が届かない

 

ディーンは何度も何度も無線機に向かってレスキュー隊要請を求めた。

 

何度やっても無線機からの応答はなかった

 

恐怖でわたしは足が震えだした。

 

夫に

 

「大地くん…大丈夫かな?」

 

って夫がわかるはずもないのに何度も何度も確認して

 

「大丈夫だよ。」

 

という夫の言葉を聞いて何度も自分を落ち着かせた。

 

まさかの夫に異変が…

DSC_4064一眼レフ)実際に船に乗っていたライフジャケット。(手ブレしてる)

 

それから30分くらいが経過した頃、夫の顔色が変わった。

 

「気持ち悪い」

 

さっきまで「大丈夫だよ。」ってわたしを安心させてくれていた夫が急に気分が悪くなって嘔吐した。

 

昼間の揺れで平気だった夫が嘔吐している姿を見て、夫も不安で不安で仕方がないのが伝わってきた。

 

それでもわたしを安心させようと「大丈夫だよ」って言ってくれてたと思うと申し訳なくて申し訳なくて

 

でもわたしの不安は急上昇した。

 

このまま高い波にのまれるんじゃないか

気分不良の夫をわたしは守ることができるのか

このままエンジンが回復しなかったら…

 

マイナスのことしか考えられなくなり

 

なんと

 

私も嘔吐した。

 

「死ぬかもしれない」

人生で初めてそう思った。

 

その時に思ったこと

 

それは、

 

家族の存在。

 

もし自分たちに何かあったら

親不孝、家族不幸すぎる…

 

家族のみんなを悲しませるわけにはいかない。

 

こんな時こそ弱気になってもなんの意味もない

どうせこの状況が変わらないのであれば

生き抜くためにどうするか考えるしかない

 

恐怖で震えて吐いて一回頭がリセットされたのかちょっと前向きになることができた。

 

その時!!

 

奇跡が起こった。

 

もう何十回と回し続けてきた鍵を、ディーンはダメ元でもう一度回した。

 

ウィーン…

 

エンジンがかかった!

 

3人揃って叫んだ。

 

これほどの絶望状態から奇跡的な光が見えた瞬間は過去に経験したことはない。

 

エンジンがかかった時、時刻はすでに17時だった。

 

3人はそれぞれ太陽の光を確認した。

 

あと1時間もすれば日は沈んで真っ暗になるだろう。

 

そんなに大きくない船はライトなどなく夜の海を走るなんて危険すぎる。

でも、このまま海に残ることの方がもっと危険。

 

わたしたちは迷うことなく夜の海を走ることを選択した。

 

ディーンの表情が明るくなった。

そのディーンの表情をみてわたしたちの気持ちも一気に明るくなった。

 

これで帰れる!!と思ったのに…

DSC_4062

 

ボートは走り出した。

 

もうエンジンが止まらないことをただただ祈るばかりだった。

 

ディーンは100キロほど離れた町の場所を確認するために、現在地と目的地をGPSで確認した。

 

ところが、またしても衝撃的な運命が待ち受けていた。

 

GPSが反応しない…

故障した

 

ディーンはそれでも走り続けた。

 

太陽の位置を確認し、おそらくいつもの感覚を思い出していたんだと思う。

 

でも、海は前後左右どこをみても海しかない。

太陽が完全に沈めば東西南北すらわからなくなる。

 

わたしは恐る恐るディーンに尋ねた。

 

Can we get to the town?(わたしたち町にたどり着く?)

 

するとディーンはと答えた。

 

I hope so.(そう願うよ)

 

GPS機能が失われた…このまま暗い海を突き進むか、無人島で朝を待つか

DSC_4029一眼レフ)GPSの機械が壊れてGPSに怒っているディーン

 

エンジンはかかったけどGPSの電波が入らない…

 

それでも突き進むディーン。

きっと野生の勘で突き進んでる。

 

そんな危険なことはしたくない。

 

わたしはディーンに言った

 

I can stay the island!(今日島に泊まってもいいよ)

 

運良く?エンジンが止まった場所から2〜3キロくらいのところに島が見えていた。

 

DSC_4055一眼レフ)私が提案した島?っていうより大きな岩?いま考えるとここは危険か…

 

島といっても、誰も住んでいない建物もなんにもない本当の無人島。

 

いつまたエンジンが止まるかわからない船で、しかもGPS機能のない状態では危険すぎる。

 

しかし、私の提案に対してディーンはクスッと笑ってそのまま突き進んでいった。(それ以上強くは言えなかった私)

 

どんどん島が遠ざかっていくとともにわたしの不安はまた増すばかり。

 

後ろを振り向くと、嘔吐したあとの夫はぐったりしている。

 

波の衝撃でまたエンジンが止まらないように、方向を見失わないように、夜の海で事故に遭わないように

もうこんなに祈ったことはないってくらい何かに祈り続けた。




奇跡のGPS機能復活!!これで本当に帰れる!

その時だった。

 

GPSが動き出した!

 

願いが通じたー!

 

まだまだ安心はできないけど、すっごくホッとした瞬間だった。

 

それから1時間くらい走り続けた。

 

もう誰もしゃべらない

波の度にくる振動に耐えて、エンジンが止まらないように、何かにぶつからないように

祈りながらのあの時間ほど長く感じたことはない。

 

ずっと先を見つめてた。

 

すると1粒の光が!

 

町の光!

 

Light!Light!

 

とディーンと喜んだ(夫はそれどころじゃなかった笑)

 

光が見えてからがものすごい遠かったけど、光が1つから2つ、2つから3つに増えていくのがすごく嬉しかった

 

生還…魔の4時間だった。本当に生きててよかった。

わたしたちは無事生きて陸に足をつけることができた。

 

17時に出発して町に着いたのは20時過ぎ。

エンジンが故障したのが16時だったから4時間海の上をさまよっていた。

 

 

あの魔の4時間はもう二度と経験したくない。

 

帰り道、ディーンはある場所に寄った。

そのある場所でディーンが買ってきたのもはビール1ケース(笑)

 

ディーンも安心したんだと思う。

 

ディーンとわたしはビールで乾杯して家に帰った(夫はまだそれどころじゃない笑)

 

ディーンの家に車を置いていたわたしたちはディーンの家に向かった。

ディーンの家に着いたのはもう21時を回っていた。

 

家に到着した瞬間、車の音ですぐにわかったのかディーンの奥さんのジョディが家から飛んで出てきた。

 

そしてすぐにわたしたちの元に来てハグをしてくれた。

ジョディがすごくすごく心配してたいたのがわかって泣きそうになった。

 

ジョディは夜も遅いのにわたしたちのために晩御飯を作ってくれた。

 

そういえば作って持って行ってた手巻き寿司全く食べてなかった。

大揺れで胃に何かに入れてる場合じゃなかった。

 

ホッとしたら一気にお腹が空いてきて、ジョディのお料理をガッツリいただきました。(夫このときには復活!さすが!笑)

 

DSC_4066一眼レフ)ステーキたんまりいただきました‼︎ディーンはジョディに今日あった出来事をひたすら伝える。
私たちの作った手巻き寿司カピカピになってた。笑

 

わたしたちの住む家への帰り道

 

泣いた。

 

怖かったのと安心したのとが混ざって、とにかく泣いた。

 

夫が隣にいて生きててくれて本当によかった。

 

生きててくれるだけでこんなに幸せなんだって心から思えた日だった。

この経験は一生忘れない。

 

14087337_1088118717932868_138568818_o写メ)次の日の仕事終わりにディーンが釣った魚をさばいてくれた

 

終わり。

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